一型糖尿病の原因
一型糖尿病は、遺伝的要因と環境的要因の2つが組み合わさることによって膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊されることで発症する。
第1要因:遺伝的要因
生まれつき特定のHLA型を持ち、膵臓のランゲルハンス島β細胞が常に狙われやすい状態にある。
第2要因:環境的要因
環境中のウイルスなどに感染することにより自己免疫が誘導され、β細胞の破壊が開始される。
生まれつき白血球の遺伝子型が特殊であると、その人の膵臓のランゲルハンス島β細胞に対して自己免疫系が働きやすい(=β細胞が自身の白血球により攻撃を受けやすい)状態になっている。こういった人がウイルスに感染すると、ウイルスに対して働くはずの白血球が膵臓のβ細胞をも攻撃してしまう。
β細胞はインスリンを産生する機能があるため、破壊が進行すると体内のインスリン量が減少し最終的には枯渇してしまうことになる。インスリンは血糖値を下げるために必要なホルモンであるため、インスリンが産生できないということはつまり「血糖値を下げることができない」ことを意味する。従って、β細胞の破壊によるインスリン量の現象は糖尿病の原因の1つとなる。
一型糖尿病の症状
一型糖尿病の代表的な症状としては以下のようなものが挙げられる。
・多尿
・口渇
・多飲
・体重減少
・意識障害(昏睡)
・アセトン臭
インスリンの分泌量が過度に低下すると高血糖状態になる。高血糖状態では血管内の浸透圧が高まっており、周囲の細胞から水分を引き抜きやすい。従って血管内の水分量が増え、それが最終的に尿量の増加(多尿)に繫がっていく。多尿になると、当然体内の水分量が減少するため常にのどが渇いている状態(口渇)になるので水を多く飲む(多飲)。この多飲がさらなる多尿を引き起こす原因となる。
また、インスリン量の減少は「同化不全(異化亢進)」を引き起こす可能性もある。同化とは「食事などにより摂取したエネルギーを(グリコーゲンなどの形で)貯蔵し蓄えること」、異化とは「蓄えたエネルギーを使える形に分解すること」である。同化不全が起きると、摂取したエネルギーをうまく蓄えることができないので、脂肪(=エネルギーを蓄えたもの)の量が減少し体重が落ちたり、全身倦怠感(エネルギーが不足し元気がない)が見られたりする。
さらに、異化亢進により体内に蓄えてある脂肪の分解が進むため「ケトン体」が過剰に産生される。ケトン体量が増加すると「ケトアシドーシス」が引き起こされ、意識障害が見られるようになる。(意識障害が進行すると“昏睡状態”に)
二型糖尿病の原因
二型糖尿病の発症には、「インスリン分泌障害」と「インスリン感受性の低下」の2つが関与している。
インスリン分泌障害とは、インスリン分泌に関与する遺伝子の異常などが原因で体内におけるインスリンの分泌量が低下する症状のことで、進行すると徐々に血糖値が上がっていく。
インスリン感受性の低下(=インスリン抵抗性)とは、遺伝子の異常や肥満・運動不足・ストレスなどが原因でインスリンを認識する能力が低下している状態のことである。
上図を見てわかるように、インスリンの感受性が高い時には少量のインスリンでも血糖低下作用が確認できるが、反対にインスリンの感受性が低い(=インスリン抵抗性が大きい)場合には大量のインスリンがあったとしてもさほど血糖低下作用が見られない。
2型糖尿病の分類
インスリン分泌障害とインスリン抵抗性が2型糖尿病の原因となることは既に説明したが、「どちらが原因となって発症するか」というのは人によって様々である。
正常又は軽度の肥満の人は、インスリン分泌障害を主原因とする糖尿病を発症しやすい。これは、(上で述べたように)インスリン抵抗性は肥満や運動不足があって初めて問題になることだからである。肥満が見られない人は、インスリン抵抗性が原因の糖尿病になることは少ない。(人によりインスリン感受性に関わる遺伝子に異常がある場合もあり)
高度な肥満の人は、インスリン抵抗性を主原因とする糖尿病を発症する場合が多い。これは、繰り返し述べているように肥満や運動不足がインスリン抵抗性の直接的な原因となるからである。
中程度の肥満で糖尿病を煩っている場合は、遺伝的要因と肥満が半々で原因となっている場合が多い。
2型糖尿病の症状
2型糖尿病は1型糖尿病と比べて進行が緩やかである。従って、たとえ発症していたとしても自覚症状がない場合がほとんどで、治療が遅れてしまうケースが多発している。初期段階の糖尿病を見逃すと、重症化してしまったり合併症を発症してしまったりするので、定期的な検診で早期に発見することが重要である。
高血糖による症状
・多尿
・口渇
・多飲
・体重減少
代表的な合併症
・手足のしびれ(神経障害)
・胸の痛み(虚血性心疾患)
・飛蚊症(網膜症)
一般的な症状としては1型糖尿病と同じ高血糖を原因とする症状(多尿・口渇・多飲・体重減少など)である。
また、代表的な合併症としては神経障害による手足のしびれや虚血性の心疾患を原因とする胸痛、網膜症の一種である飛蚊症などが挙げられる。