インスリンによる血糖値低下の仕組み

インスリンによる血糖値低下の仕組み

インスリンは血糖値を低下させるホルモンとして知られている。
ここでは、細胞内への糖の取り込みからインスリンが放出され血糖値を低下させるまでのメカニズムを解説していく。

GLUT2とGLUT4

まずは予備知識として輸送担体「GLUT2GLUT4」の働きについて確認する。

POINT
・GLUT2
分布:膵臓β細胞・肝細胞
機能:糖の取り込み(インスリン非依存的)
・GLUT4
分布:筋細胞・脂肪細胞
機能:糖の取り込み(インスリン依存的)

GLUT2は膵臓のランゲルハンス島β細胞や肝細胞に存在し、インスリン非依存的(インスリンによる補助を受けず)に血中の糖を細胞内に取り込む。
GLUT4は筋細胞や脂肪組織に存在し、インスリン依存的に血中の糖を細胞内に取り込む。
なお、(下に詳しく記載しているが)GLUT2とGLUT4の関係は「GLUT2からの糖の取り込みによってインスリンが分泌され、そのインスリンの刺激を受けてGLUT4は糖の取り込みを行う」といった感じである。

インスリンが分泌されるまで

流れ
① 糖が過剰
→ GLUT2から細胞内に糖が流入
② 糖が代謝される
→ ATPが産生
③ ATPによりK+チャネルが閉鎖
→ 細胞膜が脱分極
④ Ca2+チャネルが開口
→ Ca2+が細胞内に流入
⑤ 分泌顆粒内のインスリンが血中へ放出

食事などにより血中の糖が過剰になると、GLUT2(輸送担体)を介して膵臓のランゲルハンス島β細胞内に糖が流入する。
β細胞内に取り込まれた糖は、代謝経路(TCA回路・解糖系など)によって代謝され、この時にATPと呼ばれるエネルギーが生成される。
ATPはカリウムチャネル(K+チャネル)を閉鎖するため、(通常はK+チャネルによって細胞外に流出されているはずの)K+が細胞内に蓄積して、細胞内が正に帯電する。
その結果、細胞膜の脱分極が起こりそれが引き金となってカルシウムチャネル(Ca2+チャネル)が開口する。
開口したCa2+チャネルを介して細胞内にCa2+が流入し、その刺激によって分泌顆粒内に存在するインスリンが血中へ放出される。

インスリンが血糖を低下させるまで(筋肉・脂肪組織)

次に、インスリンが血中に放出されてから実際に血糖を低下させるまでのメカニズムを確認していく。

インスリンによる血糖低下
① インスリンがインスリン受容体に結合
→ 受容体はリン酸化される
② 受容体のリン酸化に刺激され連続的にリン酸化が起こる
③ GLUT4が細胞膜上に移動
→ 糖の取り込みが促進される

血中に放出されたインスリンは、インスリン受容体(インスリンを受け止める容器のようなもの)に結合してこれをリン酸化させる。リン酸化した受容体は活性化して細胞内に存在する他のタンパク質を連続的にリン酸化させ、このシグナルが最終的に「GLUT4の細胞膜上への移動」を促進する。GLUT4はグルコース(糖)の取り込み作用があるため、血中から細胞内への糖の取り込みが促進され血糖値が低下する。

*プラスの知識*
インスリン受容体のリン酸化シグナルは、GLUT4の移動だけでなく「酵素の活性調節」や「遺伝子の発現」などにも関わっている。
リン酸化シグナルにより酵素の活性が促進(または抑制)されると、グリコーゲン合成・脂肪合成・タンパク質合成などが促進される。また、糖新生は抑制される。
リン酸化シグナルによりmRNAの合成が促進されるとタンパク質の合成が促進、DNA合成が促進されると細胞増殖が盛んになり成長作用が見られる。
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