アトピー性皮膚炎の原因・症状・合併症・治療法

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アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、増悪・寛解を繰り返す,瘙痒 のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ。(日本皮膚科学会による定義)

POINTアトピー素因 ・家族歴や既往歴(気管支喘息/アレルギー性鼻炎/結膜炎/アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患) がある
・IgE抗体を産生しやすい

家族歴や既往歴(気管支喘息/アレルギー性鼻炎/結膜炎/アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患) があったり、IgE抗体を産生しやすかったりすると、アトピー性皮膚炎を発症しやすい。ただし、あくまでアトピー素因を持っているとアトピー性皮膚炎を発症“しやすい”だけで、アトピー性皮膚炎患者が必ずアトピー素因を持っているわけではない。

また、近年では内因性アトピー性皮膚炎と呼ばれるIgE抗体が関与しない皮膚炎も発見されており、従来のIgEが関与する皮膚炎のことをそれと対比して「外因性アトピー性皮膚炎」と呼ぶこともある。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の代表的な症状は以下の通りである。

POINTアトピー性皮膚炎の症状 ・皮膚の乾燥
・皮膚のかゆみ
・発疹
・皮膚の硬化

アトピー性皮膚炎では、皮膚の乾燥やかゆみ、発疹、皮膚の硬化などが見られる場合が多い。

プラスの知識 アトピー性皮膚炎で見られる皮膚症状をさらに細かく分類すると以下のようになる。
・乾燥(かんそう)
皮膚の水分が減り、かさかさした状態
・鱗屑(りんせつ)
皮膚表面の細胞が細かくはがれ落ちた状態(例:フケ)
・紅班(こうはん)
皮膚が赤く腫れた状態
・丘疹(きゅうしん)
皮膚にブツブツしたドーム状の盛り上がりができた状態
・痒疹(ようしん)
皮膚に大きいしこりが出来た状態。強いかゆみを伴う。
・痂皮(かひ)
痒くて皮膚を掻きむしった後にできたかさぶた
・水疱(すいほう)
いわゆる、水ぶくれの状態
・びらん
皮膚が薄くはがれてただれたような状態
・苔癬化(たいせんか)
皮膚を掻きむしり続けた結果、皮膚が硬く厚くなった状態

また、アトピー性皮膚炎の症状は年齢によって特徴が異なるため、年代別の症状は個別に抑えておく必要がある。

乳児は、最初顔面や頭部の皮膚に紅班や丘疹が現れ、それが徐々に体全体に広がっていく。成長していくと、しだいに浸潤性(じゅくじゅくした状態)は治まっていき、乾燥状態を示すようになってくる。これらの症状が数ヶ月続くと、アトピー性皮膚炎が疑われる。

幼児や小児では、体全体の皮膚が乾燥状態になり、特に肘や膝の内側部分で紅班や丘疹、苔癬化が顕著になる。乳児期では食物がアトピーの原因となる場合が多いが、この時期だとハウスダストも原因となる可能性が高い。

成人では、皮膚の乾燥、苔癬化が進行し、体の各部位に“浮腫性”の紅班が見られるようになる。また、幼いころから炎症を繰り返しているため色素沈着も見られる。

アトピー性皮膚炎の合併症

POINTアトピー性皮膚炎の合併症 ・細菌感染症(伝染性膿痂疹など)
・ウイルス感染症(伝染性軟属腫/カポジ水痘様発疹症など)

アトピー性皮膚炎の合併症としては、伝染性膿痂疹(とびひ)などの細菌感染症、伝染性軟属腫(みずいぼ)やカポジ水痘様発疹症などのウイルス感染症が知られている。

また、アトピー性皮膚炎が進行すると眼病(白内障・網膜剥離など)を患う可能性もある。

アトピー性皮膚炎の検査と診断

POINTアトピー性皮膚炎の検査 ・白血球数
・IgE値
・皮膚テスト

アトピー性皮膚炎では、白血球数やIgE値の検査や皮膚テスト(パッチテスト・プリックテストなど)が行なわれる。

アトピー性皮膚炎の治療法

POINTアトピー性皮膚炎の治療法 ・ステロイド薬
・タクロリムス軟膏
・保湿薬
・内服薬

アトピー性皮膚炎の治療法は、基本的にステロイド薬・タクロリムス軟膏・保湿薬・内服薬の4パターンである。

ステロイド薬は、抗炎症作用を持っており、炎症を抑えたいときに用いられる。作用の強さによって5つのランクに分けられており、患者や部位によって適切な者を選択する必要がある。副作用としては、皮膚のひ薄化や血管壁の弱体化、感染症の増悪などが知られている。

プラスの知識 ステロイド薬の5つのランクは次のようになっている。

https://www.qlife-atopy.jp/cure/medical_treatment/story2473.html

タクロリムス軟膏は、カルシニューリン阻害薬の一種であり、免疫系に関わるT細胞の活性化に伴いサイトカイン遺伝子の転写を阻害することにより抗炎症作用を示す。特に、顔面や頸部の皮疹に対して用いられることが多く、(皮膚刺激性が強いため)びらんや潰瘍面には使用できない。また、2歳以下の小児、妊婦、授乳中の人には使用できない。副作用としては、塗布部への過剰な刺激によるほてり・熱感などが知られているが、使用を続けると消える場合が多い。また、ステロイドと同様感染症の増悪も見られる可能性がある。
保湿薬のうち、ワセリンは皮膚の表面に脂溶性の膜を作ることで水分の蒸発を抑えて乾燥を防ぐ。尿素やヘパリン類似化合物は、水分量増加作用・角質融解作用を持つ。
内服薬は、ステロイドやタクロリムス軟膏等の外用薬の補助として用いられる。抗ヒスタミン薬が使われることが多く、副作用の眠気やインペアード・パフォーマンスに注意するべきである。

インペアード・パフォーマンスとは 抗ヒスタミン薬が中枢(脳)でのヒスタミンの働きをブロックした結果起こる、パフォーマンスの低下(集中力や判断能力の低下)のこと
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