単純拡散
・ATPを消費しない
・透過速度はFickの拡散式に従う
・脂溶性が大きい程透過しやすい
・分子サイズが小さい程透過しやすい
・共存物質の影響を受けない
単純拡散では、透過速度は濃度勾配(濃度差)に比例する。つまり、薬物濃度が高ければその分透過速度も大きくなり、薬物濃度が低ければ透過速度も小さくなるわけである。また、(下に書いてある能動拡散とは異なり)単純拡散はエネルギー(ATP)を使わずに行なわれ、脂溶性が高い程、分子量が小さいほど透過速度は大きくなる。
単純拡散の速度はFickの拡散式という式を用いて表すことができる。
式中に出てくる分配係数は、(脂溶性/水溶性)で表すことができ、ここからも脂溶性が高い(その結果分配係数が大きい)方が膜透過速度が大きくなることが理解できる。
また、ΔδとAについてであるが、Δδは膜の厚さを表しており、これが大きいと当然膜を透過するまでの時間が長くなるので透過速度は小さくなる。Aは膜の表面積を表していおり、これが大きいと一気に多くの薬物を透過させることが出来るため膜透過速度は大きくなる。
促進拡散
・ATPは使用しない
・輸送担体を介した輸送を行なう
・飽和と競合が起こる可能性がある
促進拡散では、輸送担体を介した薬物輸送が行なわれる。従って、基質濃度が高いと飽和を、化学構造が類似している化合物があると競合を起こす可能性がある。また、単純拡散同様、輸送の際にATPは必要としない。
能動輸送
・輸送の際にはATPを必要とする
ATPを直接利用→一次性能動輸送
ATPを間接的に利用→二次性能動輸送
・透過速度はミカエリスメンテンの式に従う
・飽和や競合を起こす可能性がある
・低温で輸送速度が低下する
能動輸送は輸送担体を介した膜輸送機構であり、エネルギー源としてATPを必要とする。
ATPを直接利用して薬物輸送を行う能動輸送のことを一次性能動輸送、ATPを間接的に利用して薬物輸送を行う能動輸送のことを二次性能動輸送という。
能動輸送の透過速度は、ミカエリスメンテンの式に従う。
基質濃度が低いとき(グラフの左側)は輸送速度は基質(薬物)の濃度にほぼ比例する。
しかし、基質濃度が高くなると「輸送担体の飽和」が起こり輸送速度は最大輸送速度Vmaxで一定となる。(正確には、輸送速度が一定となったとき、その速度のことを最大輸送速度Vmaxという)
膜動輸送
・タンパク質などの大きな分子の膜透過に関与する
・ATPを利用する
膜動輸送にはエンドサイトーシスとエキソサイトーシスの二種類が存在する。
エキソサイトーシス → 内側から外側にはき出す
エンドサイトーシスは、細胞外にあるものを細胞内に取り込む。例としては、マクロファージの食作用などが挙げられる。
エンドサイトーシスは、細胞内にあるものを細胞外にはき出す。例としては、膵臓のランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌などが挙げられる。
膜透過まとめ
単純拡散 | 促進拡散 | 能動拡散 | 膜動輸送 | |
---|---|---|---|---|
濃度勾配 | 従う | 従う | 逆らうことも可能 | 逆らうことも可能 |
担体 | なし | あり | あり | なし |
ATP | 不要 | 不要 | 必要 | 必要 |
飽和 | なし | あり | あり | なし |
競合 | なし | あり | あり | なし |
ATP | Fickの拡散式 | ミカエリスメンテンの式 | ミカエリスメンテンの式 | なし |