急性腎不全(腎前性・腎性・腎後性)

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腎不全とは

腎不全とは、何らかの原因で腎機能に異変が起き、生体の恒常性が維持できなくなった状態のことである。

腎不全は、腎不全状態の出現する過程により「急性腎不全」と「慢性腎不全」に分類することができる。
2つのうち、今回は急性腎不全について、その仕組みや一般的な治療法を解説していく。

急性腎不全とは

急性腎不全とは、糸球体ろ過速度(GFR)が急速に低下することで、水や電解質、老廃物などの調節が阻害される疾患のことである。

急性腎不全では腎機能が短期間のうちに障害されるが、速やかに対症療法を行うことで腎機能の回復が期待できる(=可逆性)。

また、可逆性の疾患ではあるが障害を起こすスピードが早いため罹患者の死亡率は50%以上(諸説あり)とされている。死亡に至る場合の多くは「高K血症による心肺停止」である。

急性腎不全の分類

急性腎不全の分類
・腎前性急性腎不全
・腎性急性腎不全
・腎後性急性腎不全

腎前性急性腎不全とは、腎そのものは正常であるが、出血や脱水などによる循環血液量の減少、心疾患による心拍出量の低下、輸入細動脈の収縮などが原因で腎血液量が減少(=腎血虚)して発症する腎不全である。
体液量を確保するために尿量(≒GFR)を極端に低下させて高窒素血症が起きてしまったり、レニン-アンギオテンシン系(RA系)の活性化による血管収縮を原因として腎血流量のさらなる減少が起きてしまったりと、放っておくと病気自身を原因としてさらに症状が悪化していくケースが多い。また、腎血流量の減少が起こると体液量の確保のためナトリウムと水分の再吸収が亢進し、結果として尿浸透圧の上昇や尿中ナトリウム低値を伴った乏尿が見られる場合がある。

腎性急性腎不全とは、“腎そのもの”が障害されることによって起こる腎不全である。
腎臓の中で特に障害を受け易いのは尿細管と間質であり、その他にも糸球体や腎血管などで障害が見られる場合がある。

腎障害の原因
持続的な腎血虚・腎毒性物質の蓄積

腎障害が起こる原因として代表的なのは持続的な腎血虚(=持続的な腎前性急性腎不全)腎毒性物質の蓄積である。
これら2つの要因を引き起こす要因は次の通り。

持続的な腎血虚・腎毒性物質の蓄積の要因
・腎前性急性腎不全の進行(急性尿細管壊死)
・糸球体腎炎
・間質性腎炎
・全身エリテマトーデス
・薬剤による急性尿細管壊死など

腎後性急性腎不全とは、尿路の狭窄や閉鎖により、腎臓の内圧が上昇した結果起こる腎不全のことである。
GFRの急速な低下により体重増加・末梢の浮腫や高血圧などを生じ、進行すると心不全・肺うっ血・肺水腫を発症する恐れがある。
また、尿量は一般的に減少し乏尿や無尿になる場合が多い。

腎前性と腎性の判断

腎後性急性腎不全に関しては、超音波検査及びCT検査で判断可能な場合が多い。
それに対して、腎前性・腎性急性腎不全の区別はこういった検査のみでは難しく、以下の点を考慮する必要がある。

腎前性・腎性の判断
・尿中タンパク
 → 腎前性:変わらない 腎性:上昇
・尿浸透圧
 → 腎前性:上昇 腎性:変わらない
尿所見 腎前性 腎性
尿浸透圧 少量の尿に老廃物が混じっている→尿浸透圧が高い BUNなどの老廃物を尿中に出すことができない→腎前性に比べ尿浸透圧が低い
尿中ナトリウム Naの再吸収能は正常→尿中Naは正常 Naの再吸収が上手くできない→尿中Naが高い

急性腎不全の治療

急性腎不全の治療では、原因疾患の治療増悪因子の除去が最優先である。

また、腎機能を回復させるための対症療法として代表的なものは食事療法・薬物療法、血液浄化療法である。
食事療法は、タンパク質制限、カロリー摂取、食塩制限、カリウム制限(腎機能の低下により体内にカリウムが蓄積するため)などに重点に置き行っていく。薬物療法では、利尿薬を用いて、腎機能の低下により貯留した水分を減少させる。食事療法と薬物療法で病態のコントロールができなかった場合、血液透析(HD)を使うことも考慮する。

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