ビタミンD「歴史・種類・構造・働き・欠乏症・過剰症」

ビタミンDの歴史

骨の変形をきたす「くる病」という病気は古くから知られていた。1919年にロンドン大学のMellanbyはくる病が栄養障害であること、またタラの肝油の中にくる病を治す成分(=抗くる病成分)が含まれていることを証明した。当初、その成分はビタミンAであると推測されていたが、1922年にジョンホプキンス大学のMcCollumはタラの肝油を加熱してビタミンAを不活性化しても“くる病を治す成分が消えない”ことを発見し、これによって抗くる病成分はビタミンAではないことがわかった。1924年にウィスコンシン大学のSteenbockは油脂やバター、乳製品などの食品に紫外線を照射すると、抗くる病成分が生成することを発見し、これの名をビタミンDと定めた。

ビタミンDの構造

・D2
・D3
・D4
・D5
・D6
・D7

ビタミンDは全部で6種類存在する。(D1は発見後削除されたため現在はなし)
その中でも生体機能を維持する上で特に重要なのはD2D3である。

ビタミンD2は、主にキノコ類に含まれている。エルゴステロールと呼ばれる菌類に特有なステロイドを前駆体として、紫外線の作用によって生成する。

ビタミンD3は、動物が自身で合成するビタミンである。コレステロールの前駆体である7-デヒドロコレステロールを前駆体として、紫外線の作用によって合成される。このビタミンは基本的に自分自身で合成する量で足りており、それほど外部から補給する必要はない。(ビタミンの定義「微量で生体機能の調節を行い、生体内で合成されないか、又は生体内で合成されるが必要量に満たないもの」に合わないが、古くからビタミンとして扱われいるので今でもビタミンとして扱われている。)

ビタミンD3の代謝

ビタミンD3は紫外線により皮膚で合成された後、血液中を通って肝臓に運ばれ、25位の水酸化を受ける。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ビタミンD

その後、腎臓に運ばれ1α位の水酸化を受けて「1α,25-ジヒドロキシビタミンD3」という活性型のビタミンD3なる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ビタミンD

ビタミンD3は活性化を受けない状態ではさほど生理活性を示さないので、ビタミンD3が十分な効果を発揮するためにはこの過程がとても重要である。

ビタミンDの存在場所

ビタミンDは生体内では皮膚により合成されている。
また、食品中ではビタミンD2はキノコ類や納豆などに、ビタミンD3はカツオやイワシなどの魚類、鶏卵、牛乳などに含まれている。

骨のリモデリング機能とビタミンD

ビタミンDと骨の関係に関して説明する前に、まずは「骨のリモデリング機構」に関して説明する。

骨は次のような仕組みでコントロールされている。

①骨芽細胞が骨基質タンパク質を合成する
②骨基質タンパク質に骨塩が沈着
③骨が出来上がる(骨形成)
④破骨細胞によって骨が溶解される(骨吸収)
⑤①〜④の繰り返し

まずは、骨芽細胞によって骨基質タンパク質が合成される。骨基質タンパク質は一般的に“コラーゲン”のことであり、これに骨塩と呼ばれるリン酸カルシウムの結晶が沈着することで骨が形成される。ここまでの過程のことを「骨形成」という。
また、形成された骨は永遠にそのままの形で存在しているわけではなく、古い骨は一旦破壊して新しい骨に置き換える必要がある。骨を一旦破壊する過程は骨吸収と呼ばれ、破骨細胞によって行われる。

リモデリング機能が崩れると、様々な症状を引き起こす場合がある。

骨吸収が骨形成を上回ると、骨密度が減少する。骨密度が減少すると、正常時に比べて骨折をしてしまう危険性が高まる。このような状態を「骨粗しょう症」という。また、“骨吸収が骨形成を上回る”という状態は加齢が原因になる場合と閉経が原因になる場合があり、前者を「老人性骨粗しょう症」、後者を「閉経後骨粗しょう症」という。

活性型ビタミンDはパラトルモンやカルシトニンなどと同様、カルシウムイオンCa2+の代謝を調節するホルモンの一種であり、その働きは以下の通りである。

・腸管でCa2+の吸収を促進
・腎尿細管でCa2+の再吸収を促進

活性型ビタミンDは、腸管内からのCa2+の吸収を促進することで体内へのCa2+取り込み量を増加させ、腎尿細管からのCa2+の再吸収を増加させることでCa2+が体外へ出ていくのを防ぐ役割を果たしている。その結果、体内に存在するCa2+の量が増加するため、骨吸収が促進されて骨密度の低下を防ぐことができる。

ビタミンDの欠乏症

ビタミンDが不足すると次のような症状が現れることがある。

・くる病(小児)
・骨軟化症(成人)

骨軟化症の小児版をくる病と呼ぶが、両者は本質的には同じ病気である。
くる病と骨軟化症はともに「骨芽細胞による骨基質タンパク質の形成は行われるものの、骨塩の沈着が十分に行われない」ために骨の強度が弱くなり発症する。主な症状としては、外転変形・内転変形・頭蓋骨の変形などが挙げられる。

ビタミンDの過剰症

上で述べたように、ビタミンDは体内のCa2+量を増やすビタミンなので、ビタミンDを過剰に摂取すると「高カルシウム血症」が起こる。
高カルシウム血症の主な症状としては食欲不振・体重増加・嘔吐などが知られており、重症になると腎動脈にカルシウムが沈着して死亡する場合もある。

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