目次
自律神経節刺激薬・自律神経節遮断薬とは
自律神経節刺激薬とは、自律神経節のアセチルコリン受容体(ニコチン受容体)に作用して脱分極を引き起こし、神経衝撃を生じさせる薬物である。対して、自律神経節遮断薬とは、自律神経節のアセチルコリン受容体(ニコチン受容体)を遮断して神経情報の伝達を抑制する薬物のことである。いずれにしても自律神経節に存在するニコチン受容体に作用しているという点がポイントである。
自律神経支配の優位性と節遮断薬の効果
| 器官 | 優位な神経 | 節を刺激した時の効果 | 節を遮断した時の効果 |
|---|---|---|---|
| 動脈 | 交感神経 | 血管収縮 | 血管拡張 |
| 汗腺 | 交感神経 | 分泌亢進 | 分泌低下 |
| 瞳孔 | 交感神経→瞳孔散大筋に作用 副交感神経→瞳孔括約筋に作用 |
縮瞳(副交感神経刺激による縮瞳効果が交感神経刺激による散瞳効果を上回る) | 散瞳 |
| 心臓 | 副交感神経 | 徐脈(心拍数減少) | 頻脈(心拍数上昇) |
| 毛様体筋 | 副交感神経 | 水晶体が厚くなる→近視 | 水晶体が薄くなる→遠視 |
| 消化管平滑筋 | 副交感神経 | 機能亢進→下痢 | 機能低下→便秘 |
| 気管支平滑筋 | 副交感神経 | 平滑筋収縮→気管支収縮 | 平滑筋弛緩→気管支拡張 |
| 膀胱平滑筋 | 副交感神経 | 機能亢進→排尿 | 機能低下→排尿困難 |
| 唾液腺 | 副交感神経 | 唾液分泌亢進 | 唾液分泌低下 |
自律神経刺激薬一覧と作用機序
| ジメチルフェニルピペラジニウム(DMPP) | ・4級アミン ・中枢作用なし(4級アミンは大きいため血液脳関門を通過できないため) ・持続適切遮断を起こしにくい ・臨床応用無し |
|---|---|
| テトラメチルアンモニウム(TMA) | ・4級アミン ・中枢作用無し(4級アミンは大きいため血液脳関門を通過できないため) ・DMPPの1/100程度の効力 ・臨床応用無し |
自律神経遮断薬一覧と作用機序
| テトラエチルアンモニウム(TEA) | ・TMAのメチル基をエチル基に変換したもの ・4級アミン ・中枢作用無し(4級アミンは大きいため血液脳関門を通過できないため) ・臨床応用無し |
|---|---|
| ヘキサメトニウム(C6) | ・4級アミン ・中枢作用無し(4級アミンは大きいため血液脳関門を通過できないため) ・薬理実験で用いられる |
| ペントリニウム | ・4級アミン ・中枢作用無し(4級アミンは大きいため血液脳関門を通過できないため) |
| メカミラミン | ・2級アミン |
| ペンピジン | ・3級アミン |
| トリメタファン | ・3級アミン ・かつて、脳外科手術時の血圧低下を目的として使用された。(血圧低下により脳血流量を減少させる) ・ヒスタミン遊離作用をもつ(アレルギー患者には使用できない) |
ニコチンとニコチン類似薬
ニコチンは少量で自律神経節を興奮、大量で(麻痺させて)遮断する作用をもつ。
| ニコチン | ・神経節、骨格筋、中枢に対して作用する ・神経節にニコチンを与えると、細胞が脱分極する過程で高頻度の活動電位を発生する(burst discharge) ・脱分極が十分に行われるとburst dischargeは終了する ・ニコチンを取り除いた後も節遮断作用はしばらくの間継続する ・骨格筋のニコチン受容体に作用し、繊維性攣縮を引き起こす ・中枢の視床下部に作用し、バソプレシン(抗利尿ホルモン:水の再吸収を促進する)の分泌を促進する |
|---|---|
| バレニクリン | ・ニコチン類似薬(ニコチンと似た作用を示す薬物) |
| ロベリン | ・ニコチン類似薬(ニコチンと似た作用を示す薬物) |
