吸入麻酔薬とは
吸入麻酔薬とは、麻酔深度の調節が比較的容易で、任意の深度に長時間保つことができる麻酔薬のことである。
(後の静脈麻酔薬と異なり)麻酔の“維持”に用いられる。
・エーテル
・ハロタン
・イソフルラン
・セボフルラン
【常温で気体】
・亜酸化窒素(N2O:笑気とも呼ばれる)
静脈麻酔薬とは
静脈麻酔薬とは、静脈に直接注入することで、速やかに全身麻酔状態が得ることのできる麻酔薬である。
吸入麻酔薬とは異なり、麻酔深度の調節が困難で、短時間の手術や麻酔の導入薬として用いられる。
・チアミラール
・プロポフォール
・ミダゾラム
・ケタミン
全身麻酔薬の作用機序
全身麻酔薬は、大脳から順に、間脳、中脳、小脳、脊髄、延髄という順で中枢神経系を抑制していく。(不規則性下降性麻痺)
延髄を一旦飛ばして脊髄にいくのは延髄が抑制されると呼吸麻痺が起こるためである。
また、モルヒネは脊髄よりも延髄を先に抑制する。(規則性下降性麻痺)
従って、全身麻酔薬としては不適当である。
吸入麻酔薬一覧
・亜酸化窒素(笑気)
・ハロタン
・セボフルラン
・イソフルラン
・デスフルラン
エーテルは、引火性・爆発性を持つ麻酔薬である。麻酔力・筋弛緩力共に強力であるが、気道粘膜刺激作用による気道分泌増加、覚醒時嘔吐などの副作用がある。
亜酸化窒素(笑気)は強い鎮痛作用があるが、麻酔作用・筋弛緩作用は弱い。酸素欠乏症を起こしやすいため、酸素を20%以上混合する必要がある。
ハロタンは、麻酔作用が強力であるが、鎮痛作用と筋弛緩作用は弱い。副作用として(心筋のカテコールアミン感受性を増大させることによる)不整脈・悪性高熱症・肝障害などが知られている。
セボフルラン/イソフルラン/デスフルランは麻酔作用は強いが、鎮痛作用は弱い。(ハロタンとは異なり)心筋カテコールアミン感受性が弱く不整脈を起こしづらいという特性がある。
静脈麻酔薬一覧
・チアミラール
・プロポフォール
・ミダゾラム
・ケタミン
チオペンタールとチアミラールは超短時間型バルビツレートであり、作用時間が極めて短い麻酔薬である。脂溶性が高いため脂肪組織中に速やかに移行して血中濃度が低下する。
プロポフォールは超短時間型の麻酔薬であり、日帰り手術の際などに用いられる。持続注入により長時間の麻酔維持も可能であり、覚醒時反応(幻覚など)は見られない。
ミダゾラムはベンゾジアゼピン系の抗不安薬として有名であるが、静脈麻酔薬としても用いられることもある。心血管系への刺激が少なく、覚醒時反応がないことが特徴である。
ケタミンは麻薬の一種であり、皮膚、筋肉、骨の痛みに対して強い鎮痛作用を示す。NMDA受容体を非競合的に遮断し脳の一部のみを麻痺させる解離性麻酔薬である。
吸入麻酔薬まとめ
薬物名 | 特徴 |
---|---|
エーテル | ・引火性/爆発性あり ・麻酔力/筋弛緩力が強い ・気道粘膜刺激作用あり ・覚醒時嘔吐 |
亜酸化窒素(笑気) | ・鎮痛作用が強力、麻酔/筋弛緩作用は弱い ・酸素欠乏症を起こしやすい(酸素を20%混合) |
ハロタン | ・麻酔作用は強力、鎮痛/筋弛緩作用は弱い ・不整脈を起こしやすい(心筋カテコールアミン感受性の増大による) ・悪性高熱症 ・肝障害 |
セボフルラン/イソフルラン/デスフルラン | ・麻酔作用は強力、鎮痛作用は弱い ・不整脈を起こしにくい(心筋カテコールアミン感受性を増大させない) ・悪性高熱症 |
静脈麻酔薬まとめ
薬物名 | 特徴 |
---|---|
チオペンタール/チアミラール | ・超短時間型バルビツレート ・脂溶性が高いため脂肪組織中に速やかに移行して血中濃度が低下する(作用時間が短い) |
プロポフォール | ・超短時間型麻酔薬 ・日帰り手術に用いられる ・持続注入により長時間投与も可能 ・覚醒時反応(幻覚など)がない |
ミダゾラム | ・ベンゾジアゼピン系抗不安薬 ・心血管系への刺激が少ない ・覚醒時反応は見られない |
ケタミン | ・麻薬の一種である ・皮膚、筋肉、骨の痛みに対して強い鎮痛作用を示す ・NMDA受容体を非競合的に遮断し脳の一部のみを麻痺させる解離性麻酔薬である |