薬物受容体とは
薬物受容体とは、薬物に対して特異的に親和性が高く、薬物と結合することにより作用の発現の初期段階を形成する生体高分子である。
受容体の機能
受容体は機能としては次のようなものが挙げられる。
・情報を細胞内に伝達する
受容体は、刺激薬(アゴニスト)を認識する機能を持っている。刺激薬分子と受容体は“特異的”な関係になっており、薬物はそれぞれが特定の受容体に結合することで作用を示す。
また、薬物は刺激薬から得た情報を細胞内情報へと転換しそれを下層へと伝えていく機能を持っている。つまり、薬が実際に“効く”ための最初のシグナルを作り出す役割を果たしているわけである。
薬物受容体の分類
・イオンチャネル内蔵型受容体
・チロシンキナーゼ型受容体
・細胞内受容体
受容体は、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル内蔵型受容体、チロシンキナーゼ型受容体、細胞内受容体の4種類に分類することができる。
Gタンパク質共役型受容体
・ムスカリン受容体
・オピオイド受容体
代表的なGタンパク質共役型受容体として、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体、オピオイド受容体などが挙げられる。
Gタンパク質共役型受容体に特徴的な事項は以下の通り。
②刺激薬と受容体の結合によりGタンパク質(GTP結合タンパク質)が活性化
③Gタンパク質はα,β,γの三量体から構成される
④GTPと結合して活性型となり、情報伝達を担う各種酵素やイオンチャネルと結合してそれらの活性を調節し、各種生体反応を引き起こす
Gタンパク質(GTP結合タンパク質)共役型受容体は、ペプチド鎖が細胞膜を7回貫通した構造をとっている。また、Gタンパク質はα,β,γの三量体から構成されており、薬物が受容体と結合するとGタンパク質がαサブユニットとβγサブユニットに分離して各種酵素やイオンチャネルと結合しそれらの活性を調節することで生体反応を引き起こす。
イオンチャネル内蔵型受容体
・GABAA受容体
・グリシン受容体
代表的なイオンチャネル内蔵型受容体として、ニコチン受容体、GABAA受容体、グリシン受容体などが挙げられる。
イオンチャネル内蔵型受容体の特徴は次の通り。
②受容体そのもの又は構成しているサブユニットによってイオンチャネルを形成している
③刺激薬が結合することによりチャネルが開口しイオンが通過して情報が伝達される
イオンチャネル内蔵型受容体は、受容体そのもの又は構成しているサブユニットによってイオンチャネルを形成している。そして、刺激薬(アゴニスト)が受容体に結合するとイオンチャネルが開口し、そこをイオンが通過することで情報の伝達が行われる。
αサブユニット(×2)、βサブユニット(×1)、γサブユニット(×1)、δサブユニット(×1)の合計5つのサブユニットにより構成されている。Na+イオンを透過させることで情報の伝達を行う。
【GABAA受容体】
αサブユニット(×6)、βサブユニット(×4)、γサブユニット(×3)、δサブユニット(×1)から構成されており、Cl–イオンを透過させることで情報を伝達する。
チロシンキナーゼ型受容体
・EGF受容体
・IGF受容体
代表的なチロシンキナーゼ型受容体として、インスリン受容体、EGF受容体、IGF受容体などが挙げられる。
チロシンキナーゼ型受容体の特徴は次の通り。
②N末端側の細胞外にはシステイン残基(-SH)を多く含む部位が存在し、ジスルフィド結合(S-S結合)を形成している
③C末端側の細胞内にはチロシンキナーゼが存在し、ATP結合部位や自己リン酸化を受けるチロシン残基などが存在する
チロシンキナーゼ型受容体は、ペプチド鎖が1回貫通した構造になっており、N末端側の細胞外にはシステイン残基(-SH)を多く含む部位が存在し、ジスルフィド結合(S-S結合)を形成、C末端側の細胞内にはチロシンキナーゼが存在し、従ってATP結合部位や自己リン酸化を受けるチロシン残基などが存在している