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副交感神経遮断薬とは
副交感神経遮断薬とは、ムスカリン受容体においてアセチルコリンと拮抗する薬物である。
副交感神経遮断薬の分類
POINT副交感神経遮断薬の分類
・ベラドンナアルカロイド
・合成アトロピン類似薬
・合成アトロピン類似薬
ベラドンナアルカロイドとは、ベラドンナなどのナス科植物の葉や根に含まれるアルカロイドのことである。合成アトロピン類似薬とは、ベラドンナアルカロイドの一種であるアトロピンを元に、作用の持続性や効果器の選択性などの付加価値を加えて開発された薬物である。
アセチルコリン受容体の分類
ニコチン受容体
NM受容体 | 骨格筋収縮 |
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NN受容体 | シナプス伝達 |
ムスカリン受容体
M1受容体 | シナプス伝達 |
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M2受容体 | 心機能低下 |
M3受容体 | 平滑筋収縮、唾液分泌促進 |
M4受容体 | 肺 |
M5受容体 | 大脳皮質 |
ベラドンナアルカロイド
アトロピン | ・植物中に存在する左旋性のL-ヒヨスチアミンを非旋光性のラセミ体として取り出したもの ・消化管運動抑制、気道分泌抑制 ・洞房結節における迷走神経支配を遮断→頻脈を誘発 ・眼房水流出経路の抵抗増大→眼圧上昇(緑内障患者に禁忌) |
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スコポラミン | ・植物中に左旋性のL-スコポラミンとして存在する。 ・消化管運動抑制、気道分泌抑制 ・洞房結節における迷走神経支配を遮断→頻脈を誘発 ・眼房水流出経路の抵抗増大→眼圧上昇(緑内障患者に禁忌) ・麻酔導入前に気道分泌抑制(痰が多いと肺炎を起こしやすいため)などを目的として用いられることが多い |
合成アトロピン類似薬
散瞳薬(トロピカミド・ホマトロピン・シクロペントラート) | ・散瞳薬は眼の検査をする際に瞳孔を散大させるために用いる ・検査の時だけ効くように作用時間が短く設計されている(トロピカミドは20分、シクロペントラートは2時間、ホマトロピンは24時間) ・トロピカミド、ホマトロピン、シクロペントラートはいずれも3級アミンであるため、粘膜から吸収されやすく点眼で用いることができる(4級アミンだと大きすぎて吸収が悪くなる) |
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気管支喘息治療薬(イプラトロピウム・フルトロピウム・オキシトロピウム・チオトロピウム・グリコピロニウム) | ・4級アミン ・気道を拡張することで呼吸困難等を改善する ・気管支の腺分泌には影響が少ない 【注意1】あくまで予防薬として用いる場合が多い(突然の発作には適さない)
【注意2】眼に入れてはいけない(散瞳するため) 【注意3】緑内障患者には使用不可(眼房水の排出を抑制し眼圧を上昇させてしまう) 【注意4】前立腺肥大症患者には使用不可(尿が排泄しづらくなってしまう=排尿障害) |
鎮痙薬(ブチルスコポラミン・プロパンテリン・メチルベナクチジウム・メペンゾラート・オキサピウム・ブトロピウム・パパベリン) | ・消化管、胆管、尿管などの内蔵平滑筋の異常な収縮(痙攣)を抑制する ・ブチルスコポラミン、プロパンテリン、メチルベナクチジウム、メペンゾラート、オキサピウム、ブトロピウムは抗神経性鎮痙薬、パパベリンは抗筋肉性鎮痙薬である。 ・抗神経性鎮痙薬は内蔵平滑筋のムスカリン受容体においてアセチルコリンと競合的に拮抗して筋弛緩作用と鎮痛効果をもたらし、筋弛緩作用と鎮痛効果をもたらす ・抗筋肉性鎮痙薬は内蔵平滑筋のムスカリン受容体においてアセチルコリンと非競合的に拮抗する |
過敏性腸症候群治療薬(メペンゾラート、プロパンテリン、ピペタナート) | ・過敏性腸症候群は大腸の機能的な過敏症を特徴とする疾患である(器質的な異常はなし) ・メペンゾラート、プロパンテリン、ピペタナートなどの薬物は大腸などの消化管に存在するムスカリン受容体を遮断することで消化管の機能を正常化する |
消化性潰瘍治療薬(ピレンゼピン) | ・胃酸分泌を抑制することで胃への刺激を軽減する ・ピレンゼピンはムスカリンM1受容体を選択的に遮断しM2、M3受容体には作用せず、また中枢にも移行しないため副作用等が少ないという利点をもつ |
切迫性流産・早産治療薬(ピペリドレート) | ・アセチルコリンによる子宮平滑筋の過剰な収縮を抑える ・同時にオキシトシンによる収縮も抑制する |
過活動膀胱治療薬(オキシブチニン・プロピベリン・トルテロジン・ソリフェナシン・イミダフェナシン) | ・過活動膀胱とは膀胱の働きが異常に活発化することであり、結果として尿意切迫感、頻尿、夜間頻尿、尿失禁などの症状が現れる ・オキシブチニン、プロピベリン、トルテロジン、ソリフェナシン、イミダフェナシンなどは膀胱平滑筋に作用して膀胱の活動を抑え、これらの症状を抑制する |
パーキンソン症候群治療薬(トリフェキシフェニジル・ビペリデン) | ・人は本来、ドパミン量とアセチルコリン量のバランスにより体の動きを調節しているが、パーキンソン症候群では脳内のドパミン量が低下することで“相対的”にアセチルコリン量が増加している ・トリフェキシフェニジルとビペリデンは脳内のアセチルコリン量を減少させることでドパミンとアセチルコリンのバランスを調節する |