目次
交感神経刺激薬とは
交感神経刺激薬(アドレナリン受容体刺激薬)とは、交感神経に存在するアドレナリン受容体を刺激した時に交感神経機能が刺激された場合と同様の効果を発現する薬物である。
交感神経刺激薬の分類
POINT交感神経刺激薬の分類
・直接型交感神経刺激薬
・間接型交感神経刺激薬
・混合型交感神経刺激薬
・アミントランスポーター阻害薬
・間接型交感神経刺激薬
・混合型交感神経刺激薬
・アミントランスポーター阻害薬
直接型交感神経刺激薬とは、アドレナリン受容体に結合して直接的に効果器の興奮を起こす薬物である。間接型交感神経刺激薬とは、自身は受容体に対する直接的な作用は持たず、アドレナリン作動性神経終末に一度取り込まれ、シナプス小胞からノルアドレナリンを追い出し、追い出されたノルアドレナリンが受容体に結合することで効果器の興奮を引き起こす薬物である。また、混合型交感神経刺激薬は直接作用と間接作用を併せ持つものであり、アミントランスポーター阻害薬は、アドレナリン作動神経の終末に存在しノルアドレナリンの再取り込みを行っているアミントランスポーターを阻害することでアドレナリン受容体付近のノルアドレナリン濃度を上昇させる薬物である。
アドレナリン受容体の分類
α1受容体 | ・血管平滑筋収縮 ・瞳孔散大筋収縮 |
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α2受容体 | ・神経伝達物質遊離抑制 ・血管収縮 |
β1受容体 | ・心機能増大 |
β2受容体 | ・気管支平滑筋弛緩 |
β3受容体 | ・脂肪分解促進 ・消化管平滑筋弛緩 |
α1受容体は血管収縮、瞳孔散大筋収縮作用を、α2受容体は神経伝達物質遊離抑制、血管収縮作用を、β1受容体は心機能増大作用を、β2受容体は気管支平滑筋弛緩作用を、β3受容体は脂肪分解促進、消化管平滑筋弛緩作用を持つ。
直接型交感神経刺激薬(α受容体)
アドレナリン | ・α作用、β作用ともに強い ・アドレナリン反転を引き起こすことがある ・アナフィラキシーショック時に救命措置としてアドレナリン注射を行う ・アドレナリンのプロドラック(体内で代謝されてアドレナリンとして作用するもの)としてジピベフリン(緑内障に適応)が知られている |
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ノルアドレナリン | ・α作用、β1作用 ・β2作用は弱い ・アドレナリン反転を起こさない(アドレナリンとの違い) |
エチレフリン | ・α作用、β作用を持つ ・本態性高血圧や網膜動脈の血行障害に用いられる・内服で用いる |
フェニレフリン | ・α1作用が強い ・昇圧作用を目的として使われることが多く、特に手術時に静注で用いられる ・神経終末での再取り込みやCOMTによる代謝を受けないため昇圧作用は持続的である |
メトキサミン | ・α1作用が強い ・昇圧作用を目的として使われることが多く、麻酔時の低血圧に対して用いられる ・神経終末での再取り込みやCOMTによる代謝を受けないため昇圧作用は持続的である |
ミドドリン | ・選択的α1刺激作用 ・経口投与で本体性低血圧や起立性低血圧に対して用いられる |
ナファゾリン | ・選択的α1刺激作用 ・鼻粘膜の充血による粘膜浮腫や鼻づまりの際に点鼻液の形で用いられる ・眼の充血に用いられることもある |
クロニジン | ・選択的α2刺激作用 ・α2受容体刺激なので、ノルアドレナリンの遊離は抑制される→高圧作用・高血圧治療薬として使われる |
直接型交感神経刺激薬(β受容体)
イソプレナリン | ・β1、β2、β3作用ともに強い ・β1を介した心拍数と心拍出量の増大、β2を介した血管拡張により血圧を低下させる作用をもつ ・β2を介した気管支平滑筋弛緩作用、消化管平滑筋弛緩作用をもつ ・気管支拡張薬、急性心不全治療薬として用いられる |
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ドブタミン | ・選択的β1刺激作用 ・心筋収縮力増強 ・急性心不全時の心筋収縮力増強に用いる ・基本的に静注で用いる(経口投与では効かない) |
デノパミン | ・選択的β1刺激作用 ・心筋収縮力増強 ・慢性心不全に用いる ・経口投与可能(ドブタミンとの違い) |
サルブタモール | ・選択的β2刺激作用 ・気管支平滑筋弛緩 |
テルブタリン | ・選択的β2刺激作用 ・気管支平滑筋弛緩 |
プロカテロール | ・選択的β2刺激作用 ・気管支平滑筋弛緩 ・作用の発現が速く持続的である |
フェノテロール | ・選択的β2刺激作用 ・気管支平滑筋弛緩 ・喘息治療薬として用いられる |
リトドリン | ・選択的β2刺激作用 ・子宮平滑筋弛緩 ・切迫性流産、早産に用いられる |
ミラベグロン | ・選択的β3刺激作用 ・膀胱平滑筋弛緩 ・過活動膀胱に用いられる |
間接型交感神経刺激薬
チラミン | ・赤ワイン、ビール、チョコレートなどに含まれる ・交感神経終末に存在するシナプス小胞からノルアドレナリンを遊離させることにより交感神経刺激作用を示す ・レセルピンにより作用が消失する ・タキフィラキシー(繰り返しの投与により効果が減弱すること)を起こしやすい |
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混合型交感神経刺激薬
ドパミン | ・β1受容体刺激作用をもつ ・ノルアドレナリンの前駆物質であり、ノルアドレナリン遊離作用をもつ ・失血性ショックに適応あり |
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エフェドリン、メチルエフェドリン | ・エフェドリン、メチルエフェドリンともに麻黄から分離される ・α受容体、β受容体刺激作用をもつ ・交感神経終末からノルアドレナリンを遊離させる ・持続的な効果を示す ・タキフィラキシー(繰り返しの投与により効果が減弱すること)を起こしやすい ・主に気管支炎の咳止めなどに用いられる |
アミントランスポーター阻害薬
コカイン | ・アドレナリン作動神経の終末に存在しノルアドレナリンの再取り込みを行っているアミントランスポーターを阻害することでアドレナリン受容体付近のノルアドレナリン濃度を上昇させる |
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イミプラミン | ・アドレナリン作動神経の終末に存在しノルアドレナリンの再取り込みを行っているアミントランスポーターを阻害することでアドレナリン受容体付近のノルアドレナリン濃度を上昇させる |
デシプラミン | ・イミプラミンの活性代謝物 ・アドレナリン作動神経の終末に存在しノルアドレナリンの再取り込みを行っているアミントランスポーターを阻害することでアドレナリン受容体付近のノルアドレナリン濃度を上昇させる |