Gタンパク質共役型受容体とは
Gタンパク質(GTP結合タンパク質)共役型受容体は、イオンチャネル内蔵型受容体やチロシンキナーゼ型受容体と並ぶ有名な薬物受容体の一種である。
・ムスカリン受容体
・オピオイド受容体
ここでは、これらGタンパク質共役受容体について、アデニル酸シクラーゼやホスホリパーゼとの関係をメインに説明していく。
Gタンパク質共役型受容体と細胞内情報伝達
薬物がGタンパク質共役型受容体に結合した後、それを下層に伝えていく(細胞内情報伝達する)仕組みが存在するが、これを細胞内情報伝達系と呼ぶ。Gタンパク質共役型受容体を介した細胞内情報伝達系には「アデニル酸シクラーゼを活性化する系」、「アデニル酸シクラーゼを抑制する系」、「ホスホリパーゼCを活性化する系」の3種類が存在する。まずは、アデニル酸シクラーゼを活性化する系から解説していく。
アデニル酸シクラーゼを活性化する系
この系では、促進型GTP結合タンパク質(Gsタンパク質)を活性することでアデニル酸シクラーゼを活性化させる。
例として、ヒスタミンH2受容体(Gタンパク質共役型受容体の一種)に対してヒスタミンH2受容体刺激薬が結合したとする。すると、Gsタンパク質は活性化され、それに刺激を受けたアデニル酸シクラーゼも活性化される。その結果、細胞内サイクリックAMP(cAMP)濃度は増加し、プロテインキナーゼA(PKA)が活性化される。これにより、細胞内の様々な機能性タンパク質が活性化され、最終的にヒスタミンH2作用である胃酸分泌促進や心拍数増大などが引き起こされる。
この系の代表的な受容体は以下の通りである。
・アドレナリンβ2受容体
・ヒスタミンH2受容体
・ドパミンD1
・グルカゴン受容体
・アデノシンA2受容体
①薬物受容体に刺激薬が結合する。
②受容体にGsタンパク質が結合する。
③Gsタンパク質のサブユニットに結合していたGDPがGTPに置き換わる
④Gsタンパク質が「GTP・αサブユニット」と「βγサブユニット」に解離する。
⑤GTP・αサブユニットがアデニル酸シクラーゼを活性化させる。(→cAMPの産生増加)
⑥αサブユニットが持つGTPase活性によりGTP・αサブユニットが「GDP・αサブユニット」となる。
⑦GDP・αサブユニットがβγサブユニットと結合し再びGsタンパク質に戻る。
アデニル酸シクラーゼを抑制する系
この系では、抑制性GTP結合タンパク質(Giタンパク質)を活性化することでアデニル酸シクラーゼを抑制する。
例として、アドレナリンα2受容体にアドレナリンα2刺激薬が結合したとする。すると、Giタンパク質が活性化され、その刺激に伴ってアデニル酸シクラーゼが抑制される。これにより、(アデニル酸シクラーゼによってcAMPは活性化されるので)細胞内cAMP濃度が低下し、プロテインキナーゼA(PKA)の活性は低下する。その結果細胞内機能性タンパク質のリン酸化が阻害され、最終的にノルアドレナリン遊離抑制などの現象が起こる。
この系の代表的な受容体は以下の通りである。
・ムスカリンM2受容体
・ヒスタミンH2受容体
・ドパミンD2受容体
・GABAB受容体
・アデノシンA1受容体
ホスホリパーゼCを活性化する系
この系は、Gqタンパク質を活性化させることでホスホリパーゼCを活性化させる。
例として、アドレナリンα1受容体に刺激薬が結合したとする。すると、Gqタンパク質が活性化し、それに刺激されてホスホリパーゼCが活性化される。これにより、イノシトールリン脂質代謝回転が亢進し、イノシトール三リン酸(IP3)の合成が進む。IP3は細胞内へのCa2+の取り込みを促進するため、結果として平滑筋の収縮などが引き起こされる。また、これと同時にジアシルグリセロール(DG)の産生も亢進するため、プロテインキナーゼCが活性化され細胞内機能タンパク質のリン酸化が引き起こされる。
この系の代表的な受容体は以下の通りである。
・ムスカリンM1受容体
・ムスカリンM3受容体
・ヒスタミンH1受容体