小柴胡湯の適応
・微熱
・手足が火照る
・咳,痰
・胸脇苦満
小柴胡湯は、主に中期の風邪や倦怠感、胸の辺りの不快感(胸脇苦満)などに対して使用されることが多い。
また、肝血流量増加作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用などがあることから、慢性B型肝炎や慢性C型肝炎による肝機能障害に対しても利用されることがある。
小柴胡湯と相性のいい体質
・舌に白苔がつく
・口内に不快があり、食欲不振
桂枝湯や葛根湯、麻黄湯などは、ある程度体力がある人(風邪の初期症状の人)に対して用いられたが、小柴胡湯はより風邪が進行した「中期の風邪」の人に対して用いられる。中期の風邪ということは、初期の風邪より病邪が体の内側に来ている(漢方では病気は体の外側から内側に進行していくと考えられている)ので、より虚弱で体力がないと考えることができる。
また、風邪が中等度まで進んでいる場合、舌に白苔が付いたり、口内になんとなく不快感があったりと、口元にそのサインが現れることが多い。
小柴胡湯の構成生薬
小柴胡湯は、以下の7つの成分で構成されている。
【臣薬】黄芩(オウゴン)
【佐薬】人参(ニンジン)
【佐薬】甘草(カンゾウ)
【佐薬】半夏(ハンゲ)
【使薬】生姜(ショウキョウ)
【使薬】大棗(タイソウ)
・臣薬(補薬) 君薬を補い、効果を強める生薬
・佐薬 君臣を補い、副作用を軽減する生薬
・使薬 君臣佐を調和し薬効を特定の臓器に導く生薬
小柴胡湯の主薬(メインとなるもの)はその名の通り柴胡である。柴胡の第1補佐役を果たす臣薬が黄芩、副作用の軽減や薬効の補助を果たす佐薬が人参・甘草・半夏、含まれる生薬を調和させる使薬が生姜・大棗である。
柴胡は、胸脇部の炎症を取り除き、胸脇苦満、微熱、往来寒熱などを改善する。
胸脇苦満とは、胸脇部に何かが詰まっているような不快感を覚えたり、抵抗や圧痛のようなものを感じるような症状のことである。具体的には、気管に痰が詰まっているような感じがしたり、ネクタイを締めたりベルトを付ける時に普段より強い圧迫を感じるなどである。
・往来寒熱とは
往来寒熱とは「“熱”と“寒”が行ったり来たりする状態」のことである。
つまり、発熱時には悪寒(寒気)はせず、悪寒がする時には熱は落ち着いているというわけである。(胸脇苦満もそうであるが)往来寒熱は風邪の中期などの病邪が体表と体裏を行ったり来たりしているときにしか現れない現象なので、風邪の中期で小柴胡湯が適応となる場合の目安として見ることができる。
黄芩は、柴胡と組み合わせることで、柴胡の「胸脇部の炎症を取り除き、胸脇苦満、微熱、往来寒熱などを改善する」という効果を増強する作用がある。
人参は、柴胡や黄芩と組み合わせることで、心下の痞え(つかえ)に効く。
また、甘草・生姜・大棗らとともに、脾胃を補う作用も持つ。
半夏と生姜は、胃内停水を去り、吐き気を沈める効果がある。
甘草・生姜・大棗は様々な漢方で使われている組み合わせであり、諸薬を調和し、脾胃を補い、消化機能を整える作用がある。
小柴胡湯の使用方法
ツムラの公式サイトによると、小柴胡湯を投与するときは成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされている。
小柴胡湯の副作用
・偽アルドステロン症
ウイルス性慢性肝炎の患者には、インターフェロンという西洋薬(漢方薬以外の普通の薬)を使った治療を行う場合が多い。インターフェロンの代表的な副作用として間質性肺炎が知られており、小柴胡湯も(作用機序は異なるが)間質性肺炎を副作用として持つ。従って、両者を併用すると間質性肺炎を引き起こす可能性が極めて高くなってしまう。過去に、インターフェロンと小柴胡湯とを併用して間質性肺炎を発症、その後死亡したケースがいくつか存在しており、この2つの併用は禁忌とされている。
間質性肺炎とは、肺の間質(肺の中で“肺胞”と呼ばれる空気の出し入れが行われる場所を除いた部分:肺の構造を支える役割を果たしている)を中心に発症する肺炎のこと
また、小柴胡湯には甘草が含まれるため、“偽アルドステロン症”を発症する可能性がある。偽アルドステロン症とは、アルドステロンを投与した時に見られる副作用(むくみ・高血圧・低カリウム血症・体重増加)と似た症状が見られることである。
小柴胡湯と大柴胡湯
小柴胡湯と名前が似ている漢方として「大柴胡湯」というものが知られている。大柴胡湯は、より急迫症状の人に対して用いる。