結合性軌道・反結合性軌道とは
分子が結合を形成するとき、結合性軌道と反結合性軌道の2種類の軌道が作られる。
結合性軌道とは、その名の通り分子同士を結合させるために働く軌道であり、反結合性軌道とは分子同士の結合を開裂させるように働く軌道である。
水素の結合性軌道・反結合性軌道
例として、水素分子の結合性軌道と反結合性軌道を確認していく。
基本的に、物質はできる限りエネルギーの小さい(=安定な)形をとって存在しようとする。結合性軌道と反結合性軌道とでは、結合性軌道の方がよりエネルギーが低く安定である。従って、水素分子では、それぞれの原子が持っていた二つの電子を結合性軌道におくことで1番安定な状態を保っている。ちなみに、σ結合によって形成される結合性軌道の場合は「σ結合性軌道」、σ結合によって形成される反結合性軌道の場合は「σ*反結合性軌道」と表記されることが多いので把握しておこう。(結合がπ結合性だった場合には、それぞれ「π結合性軌道」「π*結合性軌道」と呼ばれる)
ヘリウムの結合性軌道・反結合性軌道
次に、「ヘリウムが分子を形成するとしたら」と仮定してヘリウム“分子”の結合性軌道と反結合性軌道を確認していく。
1つのヘリウム原子は1s軌道に2つの分子を持っているため、ヘリウム原子同士が結合を形成しようとすると反結合性軌道の方にも電子を置かざるを得ない。前述の通り、反結合性軌道は「分子同士の結合を開裂させるように働く軌道」であるので、ここに電子が入ると結合は形成されにくくなる。従って、ヘリウムの場合は水素のように分子を作ってHe2のような形にはなりにくいということになる。